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ヨハネス・ポンペ・ファン・メーデルフォールト

 

知っている人はいますか?今、彼の本を流し読みしていました。

 

ヨハネス・ポンペ・ファン・メーデルフォールト(以下ポンペ)は、オランダ海軍の軍医で、幕末に来日し、オランダ医学を伝えた凄い人です。ポンペの本というより、司馬遼太郎「胡蝶の夢」ですが。そのポンペが長崎時代に残した言葉というのに出会ったのは、いつだっけなー・・・たぶん大学2年生くらいの頃かな。医学を志す人にとって「胡蝶の夢」は有名過ぎる本ではありますが、いいですよね。松本良順の生き様、そして弟子の島倉伊之助。変革の時代に、蘭学という鋭いメスで身分社会の掟を覆していった男たちのロマンに震えます。この本を読んで、医師はいろいろなことが出来るんだ!と思いましたね。病めるのは、人だけではなく、社会も、学術も、病んでいて、社会や学術が求めるのも、医師であるんですよね。ポンペが残した言葉で締めたいと思います。

 

医師は自らの天職をよく承知していなければならぬ。ひとたびこの職務を選んだ以上、もはや医師は自分自身のものではなく、病める人のものである。もしそれを好まぬなら、他の職業を選ぶがよい。

 

【ひとりごと】根っこは強いほうがいい

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久しぶりにこのネタで記事書きます。

 

専門医の在り方に関する検討会

 

この検討会、厚生労働省で昨年の10月から開始され、先日7回目の検討会が開かれました。そのレポートを毎回読んでいるが、最近ホットな話題といえば「総合医・家庭医」という新たな専門医制度の制定です。ですが、これを新たに設置するためには、しっかり整備し直さなければいけないのが、現在の専門医制度と言われています。問題だらけというより、それぞれの学会がそれぞれ独自の専門医制度を作り過ぎてしまったということが指摘されています。詳しくは、こちらのブログ記事を読んで頂きたい(専門医の在り方に関する検討会)。第1回目は、この諸諸問題について触れられています。また第2回目の検討会では、専門医制度を設置する学会の在り方について話し合われています(専門医認定は学会ではなく新設の第三者機関で)。

 

そしてしばらく間はあきましたが、第7回目は、具体的に専門医制度を改正していくのかが話し合われ、専門医を取得するためには「二段階」の制度をひくという仕組みです。つまり、18の診療領域を基本領域として、その専門医を取得した上でサブスペシャリティの専門医を取得する仕組みが提言され、さらに、「総合医」あるいは「総合診療医」を、既存の基本領域に追加すべきだとしています。これは画期的です。

 

こうした背景には、ここ10〜15年でかなり改革が行われた医学分野の成果であるだろうかと思います。2001年にモデル・コア・カリキュラムが導入されて以降、(1)大講堂ではなく、少人数のチュートリアル教育の普及、(2)臨床実習は、見学型から診療参加型に変化、(3)カリキュラムの改変など、医学教育の改革が進んできたという経緯があります。また、2023年には、米国のECFMG (Education Commission for Foreign Medical Graduates)の受験資格は、WFME(World Federation for Medical Education)またはLCME(Liaison Committee on Medical Education)の認証を受けた医学部卒業が要件となると言われています(WFMEでは、医学教育カリキュラムの3分の1以上が臨床実習であることが基準のため、さらに臨床実習の充実を進めることが求められるとした。)。このように、医学領域における教育は、常に新しいモノに変化し続けている。これが、改革の成果だということだと思います。

 

僕らがいる獣医学領域の変革はいつやってくるのでしょうか・・・

 

【ひとりごと】自分のサンクチュアリをさがそう

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今月の始め、「カンブリア宮殿」で、医療法人 徳真会グループ理事長 松村 博史(まつむら・ひろし)氏が出演されていました。

 

2012年2月9日放送~本当に患者が喜ぶ歯科医院とは~国内最大級の歯科医療グループを追う!

 

以前、松村氏の著書「日本でいちばん大きな歯医者の秘密」を読んだときと同じ感覚になってしまい、つまり生意気ながら同人類と再び出逢えた喜びに浸ってしまいました。松村氏は歯科医師業界の異端児?改革児?と評されていますが、松村氏が話内容一つ一つは患者さんが求めているモノそのもの。経営力は医療力に比例するが、医療力は経営力に比例しないことを上手く仰っておられました。「高い経営力無くして、高品質な医療は無い」。ごもっとも。さらには、教育者人格者としても、素晴らしい言葉も残されております。「歯科医師としての価値だけではなく、人間としての価値を高めてあげたい」。ごもっとも。

 

我々が営みを行っている動物病院業界にも当てはまるところは多く、ユーザーである飼い主様らに支えられながらの持続的可能な経営力は医療力をボトムアップして頂けていることは言うまでもない。また松村氏は、歯科医院業界に対しても、勤務医や一般スタッフへの労働条件や環境整備が整っていないところには、経営力そのものは存在しない、とまで言っていた。医療系専門職を取り巻く労働環境においては、我々動物病院業界も同様、いやそれ以上の負の遺産を背負っていることには違いない。松村氏がいう、「経営力そのものは存在しない」の意味・・・それは医療施設のトップ、つまり経営者に向けられていることに違いない。松村氏が語る一言一言は、医療系専門職に従事する人間としても、教育的立場および権限者の当事者としても、どちらも尊敬に値する言葉ばかりだった。そして番組の最後に、村上龍がこう残している。

 

松村さん率いる「徳真会」の『ビジネスモデル』には、医療全体のヒントが含まれている。命を救う医療を「ビジネス」と呼ぶのは、わたしにも抵抗がある。だが、非効率な病院経営と、勤務医や研修医の過酷な労働環境が、ヒューマニズムという美しい言葉に隠蔽されているのも事実である。「徳真会」のように医療と経営を合理的に分離し、コメディカルを増やす、それだけでも医療は崩壊から遠のく。松村さんは、利益ではなく、患者のために、合理性を追求した。その合理性には、「学び続ける」という大切な要素も含まれている。

 

この番組内や著書でも紹介されている松村氏の名言?で最後は締め括りたいと思います。

 

「専門家には患者さんや社会を育てていかなければいけない使命がある」
「強い経営力は高品質な医療行為を持続可能にする」
「歯科医師免許の可能性を無限大にする」
「とにかく新しい井戸を掘り続けること」

 

松波動物病院メディカルセンター
獣医師・獣医学博士 松波登記臣

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「わかりやすいカタチ」

 松波登記臣名古屋市獣医師会松波動物病院メディカルセンター

 

私がアフリカ・ウガンダ共和国で仕事をしていたころ、日本では「ウガンダで新型エボラウイルスが発見された。」という報道がされており、私はそれを帰国してから知ったという、そんな情報音痴の自分が、人類発祥の地で駆けずり回っていたのは記憶に新しい。それからは言うもの、私は自分を啓発したかのように、常に新しい情報を、現場に赴き直接仕入れ、それを「わかりやすいカタチ」にすることにこだわり始めた。

 

帰国後、大学院で研究に没頭した。獣医学研究にいるにもかかわらず、研究内容は『医学系』な基礎研究。近年ペットの世界でもにわかに注目を集め始めている「メタボリックシンドローム」が私の研究テーマ。実際のところは、そんなに華々しい内容ではなく、メタボリックシンドローム関連疾患である糖尿病や脂肪性肝炎などの疾患モデル動物を作製するというものだ。

 

実に研究はおもしろい。実に研究は単純だ。それは、研究は「情報が命」という世界でもあり、ライバルが多い内容では、毎日スピード勝負。そんななか、獣医師でもある自分が“医学系”の世界に足を踏み入れてしまった、というのが当時の印象だった。その思いは現実となる。研究の失敗の連続、論文が通らない日々、学会では支離滅裂な質疑応答を繰り返す醜態を披露し、そして新しい疾患モデル動物を世に送り出せないもどかしさ、正直退屈な日々を過ごしていた。しかし、そんな私でも、「情報収集」だけは怠らなかった。気がつくと、自分の研究分野以外の文献も読み漁っていた。そんななか、とあることに気がつく。「これだ」。今流行っている研究分野を徹底的に調べ、さらには、いつ世の中に出てきたのかも同時に調べる。その結果、今流行っている研究の理由が明確に分かってくるのだった。それは、テーマだったり、目的だったり、材料および方法だったり、…そして「わかりやすさ」だったり、した。

 

それらを意識し、再び研究に勤しんだ。それからというものも面白いように研究結果が出たり、執筆する論文が受理されたり、また博士課程を修了するまでに6報も執筆することが出来たのだ。また、獣医系はもちろんのこと、医学系学会にもお声を掛けて頂くなど、多くの学会に参加することが出来、また大変名誉ある賞も頂くことが出来たのだ。研究生活を通じ、常に意識しなければいけないことは大変多い。だがその中でも強く意識していたのは「わかりやすさ」だった。その、「わかりやすさ」を追求した結果、論文や学会発表、そして数々の賞という『カタチ』として、世に出回り、発信され、多くの方に知ってもらえたことは、心から嬉しかった。

 

現在、名古屋にある松波動物病院メディカルセンターにて勤務医をしている。「研究をしていた、それも基礎研究をしていた獣医師が臨床をしているのか?」と研究時代の仲間たちはよく口にする。それに対し私は「臨床はおもしろいですよ。もしかしたら『わかりやすさ』が一番求められる世界なのかもしれません。」と、繰り返しお答えしている。

 

アフリカ、そして研究で経験し、そこから養うことが出来た様々な知識、そして能力は、こんな分野でも発揮される。「生物多様性」の普及啓発。研究に没頭しながらも、非営利な活動にも力を注いだ。きっかけは単純だった。「多種多様な生きものたちを守るのは、獣医師としての使命」なのでは?と、この言葉を知ったときから抱いていたのだ。旧・生物多様性条約市民ネットワーク(現・CEPA JAPAN)というNGOに所属し、私はその組織の中にある普及啓発作業部会というワーキンググループに配属されることとなった。そこは、「有志」の集まりだった。その作業部会には、政府機関、民間企業、自治体およびNPOなど、その業界業種のなかで、第一線で活躍している方々が集まっていたのだ。皆の目的は一つだった。「『生物多様性』という言葉を普及啓発したい」。そのワーキンググループで活動していくなか、私は、とあることに再び気がつく。それは「わかりやすさ」だった。そこでは、広報・PRの専門家たちが、定性的に多く集まったモノ(情報)や想いなどを、「わかりやすい」カタチにして、それぞれのフィールドで発信していたのだ。それら活動と成果が認められ、我々は生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に正式に参加することが出来たのだ。

 

私はいつも思う。「わかりやすさ」は『カタチ』になる。それが、上記活動を経験したことで、私自身が養ったノウハウでもある。

 

現在、私は、獣医師の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフバランス)」、つまり“働き方”を含む労働環境および条件に問題意識を持っており、少しずつではあるが活動をし始めている。それがいつ「カタチ」となって世の中に発信され、影響を与えるものになるかは、私自身も分かってはいない。だが、この活動に対しても、今まで以上に、「わかりやすさ」を追求していくつもりだ。もう一度、強く言いたい。「想い」だけではカタチにはならない。実際に行動し、情報を収集し、それら正しい知識を用いて、「わかりやすく」、そして、『カタチ』にしていかなければ、モノ(情報)も想いも、決して多くの人や組織に対し、“共感”を生むことはなく、人の心にも届かないものになってしまうのだ。

 

松波登記臣松波動物病院メディカルセンター

〒467-0027 名古屋市瑞穂区田辺通5-2-11

Tel 052-833-1111 Fax 052-833-1112

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長崎大学医学部の池田先生の記事をシェア。

 

私が症例報告を書き続ける理由(日経メディカルより)

 

僕も所属する日本糖尿病学会や日本肝臓学会でも近年大規模試験よりも小規模試験の数が目立ってきましたし、症例報告も多く目にする機会が出てきました。その理由としては、本記事でも池田先生が示唆されているように、オンラインジャーナルが増えてきたことが、症例報告でも論文として受理される確率が上がったのだと思います。またそれらオンラインジャーナルは無料でDL出来るものが殆どです(執筆者は数百ドル徴収されますが笑)。

 

医学分野では、その流れになってきてオンラインジャーナルのインパクトファクター(論文のレベル的な数値)も上がってきているという報告をLancetでも先日目にしました。ちなみに獣医業界は症例報告が昔から今も圧倒的に多いので、上記流れとは少し違います。

 

苦言を言うつもりはないですが、獣医臨床は、大規模試験でさえも出来ていない分野であるので(大学頑張れ)、症例報告の価値が軽く見られているようにも感じますし、多いなら多いなりに、もっとジャーナルに投稿する癖を付けたら良いのだとも思います(僕は今臨床研究に関して3本執筆中)。ですが獣医業界に関しては、症例報告が受理されにくくなってきている傾向があるので、コレもまた医学分野とは少し違いますね。

 

日本の獣医学分野が世界にアピールできるのは、やはり感染症や公衆衛生といった疫学に頑張ってもらうしか無いのでしょうかね。

 

松波動物病院メディカルセンター
松波登記臣 D.V.M., Ph.D

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厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」の第1回会議が10月13日開催された。

委員は、日本専門医制評価・認定機構理事長の池田康夫氏、日本医師会常任理事で生涯教育担当の三上裕司氏などのほか、医師、行政、患者代表の立場など、計17人から成る(資料は厚労省のホームページに掲載)。

 

ここで何をするのか?

 

(1)求められる専門医像、(2)医師の質の一層の向上、(3)地域医療の安定的確保、(4)その他、が検討事項。

 

では何故一体、このような検討会が開かれるのか?

 

委員の一人はこう言っている。

「そもそも専門医の定義すら定まっておらず、医師と国民が考える専門医は異なる可能性もある。求められる専門医とは何かを議論し、その上で、その養成のためにはどんな制度設計が必要なのかを議論していきたい」と。

また、

外形基準を最初に作ってしまったことが混乱のもと。その後、雨後の筍のように専門医制度がたくさん出てきたまった。この見直しが必要であり、日本専門医制評価・認定機構の下できちんとした体制で進むべき」と指摘している。

 

外形基準とは、2002年4月から開始した、「広告可能な専門医資格に関する規定」だ。
会員数が1000人以上であるなど、厚労省が定める9項目を満たした団体が認定する専門医資格であれば、広告が可能になった。2011年8月現在、その数は55資格に上っている。

 

この議会をきっかけに、ある議員はこう言う。
「規制緩和の名の下、学会が認める専門医を国が広告してもいい、と通達したので、それぞれ独自の専門医制度を作り始めた。今度は基本に立ち戻って早急に制度設計する必要がある。何が医療の基盤なのか、どん な医療を提供していくのか、その制度設計の中に専門医制度がなければいけない」とコメント。

 

そもそも専門医とは何かという問題もある。厚労省が13日の資料として提出した、日本専門医制評価・認定機構の調査結果によると、一般市民がイメージする専門医は、「テレビなどで取り上げられているスーパードクター」、「重症・難病の患者を治療している医師」、「医学系学会などで認定された医師」が上位 に。一方、「診療所の医師」、「内科・外科などを問わず、様々な病気を治療できる医師」は下位だった。

 

日本専門医制評価・認定機構理事長の池田康夫氏は言う。
「学会の数ほど専門医制度があると、必ずしも満足のいく制度でないケースもある」との現状認識を示した上で、「専門医は、スーパードクターでなく、各分野 で責任を持って標準的な医療を提供できる医師。日本専門医制評価・認定機構には、76学会が加盟し、二階建ての専門医制度を定着させることが重要であるというコンセンサスが得られている」と説明、「それぞれの診療を受け持つ医師が、どんな教育を受けてスキルを獲得したのか、そのプロセスを見える形にして、 どんな形で医療の役割分担をしていくか、その枠組みをこの検討会で議論していきたい」との考えを述べた。この「専門医は、標準的な医療を提供できる医師」 という考えは、参加する委員の多くも支持した。

 

今後も注目していきたい議案であります。

 

我々がいる獣医業界においても、「専門医」または「認定医」に関して、議論する余地が多くある。上記記事をご覧になって頂ければ一目瞭然であるが、医学分野においても定義付けられていない専門医制度が、獣医学分野において定義付けられているはずはない。また、獣医業界における外形基準も同様にあるが、我々を管轄する農水省が定めている団体は一つもない。唯一広告可能なものは、「学位」のみだ。

 

もう一度、確認しておく。
医学分野において広告していいのは、厚労省が定める団体(学会)のみで、その学会が認める専門医のみだ。

 

獣医業界には、このように定めているものは、一つもない。農水省が定めている団体づくりもせずに、人数も疎らな学会が専門医および認定医を、作ってもいいのでしょうか。
普遍的に考えると、これがまかり通っているとは思えないことは、明らかである。続々と、このような学会が今作られている現状を見ると、現在医学分野において議論されている事象が、将来的に獣医業界にも起こりうる可能性は非常に高いと思われます。

 

 

松波動物病院メディカルセンター
松波登記臣 D.V.M., Ph.D

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欧州糖尿病学会(EASD2011)の続きです。

 

気になるシンポジウム抄録をピックアップです。

 

University of OxfordのI. Prokopenko氏らの研究

2型糖尿病の発症メカニズム、進む遺伝子解析

 

膵β細胞の機能は加齢とともに悪化するが、ある者は糖尿病を発症し、ある者は糖尿病発症に至らない。正常 血糖が維持されるメカニズムは、糖尿病発症に関与するメカニズムとどのように関連しているのだろうか。Prokopenko氏はこの疑問に対し、二つの遺伝子研究を紹介した。一つは、空腹時血糖値、空腹時インスリン値など「健常者の生理学的な変化」に影響を与える遺伝子座を調査したMAGIC研究、もう一 つは、2型糖尿病リスクという「病理学的な悪化」に影響を与える遺伝子座を調べたDIAGRAM consortiumだ。

この2つの研究から、DGKB、SLC30A8、ADCY5、PROX1、TCF7L2、GCK、 MTNR1B、GCKRといった遺伝子が、空腹時血糖値および2型糖尿病発症の両方に関わっていることが明らかとなった。たとえば、MTNR1B、GCK はそれぞれ空腹時血糖を0.067mmol/L、0.062mmol/L上昇させ、2型糖尿病発症リスクを1.09倍、1.07倍高めることが示された。 また、2型糖尿病発症に関わる遺伝子のほとんどは、インスリン分泌の低下および膵β細胞機能の悪化に関与していた。

次にProkopenko氏は血糖値に関わる遺伝子座と膵β細胞機能の関連を調べた研究、血糖コントロー ル、インスリン分泌などの制御に対して血糖値に関わる遺伝子座が果たす役割を調査した研究などを紹介し、「遺伝子データは、血糖の恒常性維持に関わるメカ ニズムを説明するために役立つ。特に健常者を対象とした遺伝子変異の研究は、2型糖尿病リスクにつながる病態生理学的プロセスをより理解するのに有用」と 解説した。

その一例として、Prokopenko氏が提示したのが生理的なサーカディアン・リズム。起床時にはメラ トニン分泌が低下し、インスリン分泌が上昇、就寝時にはその逆が起こる。空腹時血糖値および2型糖尿病発症に関わる遺伝子として前述したMTNR1B遺伝 子はメラトニン受容体をコードしており、メラトニンはMTNR1Bを介したシグナル経路などによってインスリン分泌を抑制している。メラトニン受容体は2 型糖尿病患者の膵島で過剰発現しており、ヒトおよびマウスの研究では、サーカディアン・リズムの障害は糖尿病を含む代謝障害を招くことが示されている。

また、血中プロインスリン値も膵β細胞の障害、血糖値の上昇、インスリン抵抗性、2型糖尿病との関連が示されている。Strawbridge氏らの報告によると、ゲノムワイド相関解析によって空腹時プロインスリン値との関連が示された8つの遺伝子座(9シグ ナル)のうち、4つが2型糖尿病発症リスクとも関係していた。それぞれ2型糖尿病発症のオッズ比を見ると、ARAP1は0.88とリスクが減少し、 TCF7L2で1.4、VPS13C/C2CD4A/Bで1.07、SLC30A8で1.14とリスクが上昇していた。Prokopenko氏はこの結果 について、「プロインスリンの上昇、低下といった乱れは、膵β細胞機能の障害ひいてはその後の2型糖尿病発症を示唆する可能性がある」と指摘した。

最後にProkopenko氏は性別や環境といった外部因子と血糖の関係について解説。従来から知られている出生時体重と2型糖尿病発症リスクの関係について、ゲノムワイド相関解析の結果から、出生時の低体重と空腹時高血糖の両者に関わる遺伝子(ADCY5 など)が同定されていることを紹介した。また同様に性別によって糖代謝に違いがあることも、遺伝子(CDKN2A/2BやGRB14など)によって説明で きつつある現状を紹介し、2型糖尿病のメカニズム解明に向けて着実に進んでいることを強調した。

 

松波動物病院メディカルセンター
松波登記臣 DVM.,Ph.D

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