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Archive for 2012年4月13日

今日は珍しく獣医医療について。

 

僕の専門は糖尿病である。もっと詳しく言うと、糖尿病病態メカニズムの解明であって、もっと詳しく言うと、そのメカニズムに関連する活性酸素種によるアポトーシスの影響ってのが専門だ。専門というものはそういうものだ。これを理解できる人間は、本当にサイエンスを知っている方だけだろうけど。

 

糖尿病の基礎応用臨床研究を数年し続けて思うのは、基礎は個人プレーで、応用はキャッチボールで、臨床は家族会議みたいなもんだということ。「???」って思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にはそれ以外にあてはまる言葉は正直言って見つかりませんので、ご了承くださいませ。

 

糖尿病という病気は、誰も知ってるメジャーな病気の一つ。医療関係者以外の方にとっては、「血糖値が上がっちゃう」というざっくばらんな感じで通っているかと思う。もしかしたら、医療関係者のなかにもそう思っている方もいるかもしれないが、そう単純な病気ではない、ということをここで言わせて頂きたい。どこから話せば良いのかわからなくなるくらい広くそして深い病気であり、治療する側もされる側も精神がすり減るくらいのストレスフルな病気でもある。

 

この治療をしている方も治療をされている先生も、依存してやまないもの・・・それはインスリン。インスリンというものは、膵臓から分泌されるとあるホルモンを指す。インスリンは、血糖値を下げる、という効果をもっているため、生きていくのに絶対的に必要なホルモンです。ではこれはどうでしょう?インスリンが直接血糖値を下げると認識されている方も多いですが、それは間違いです。インスリンは血糖値を下げる手伝いをするだけで、血糖値は下がるのではなく、いろいろな臓器で取り込まれて下がる、という表現が正解でしょう。メインとなるのが骨格筋、そして肝臓、脂肪組織。インスリンが、これら臓器に作用し、この臓器らが血中の血糖値を取り込んで下げてくれているのです。

 

糖尿病にはいろいろなタイプがあります。動物でも同様にです。1型とか2型とかですが、それぞれの説明は割愛しますが、やっかいなのが2型といわれるものです。なぜ厄介かといいますと、一言でいうと、読めない、からですね。この表現も糖尿病を治療する者として独特な言い回しなのかもしれませんが、この病気にはかなりの読みが必要なのです。経験に基づく読みが、いとも簡単に外れてしまう。まぁ外れるのにはワケがあるのですが、それは後述します。厄介だという理由の一つに、生活習慣が大きく関与していることが大きいのです、この病気。俗にいう生活習慣病、メタボですね。メタボというと、お腹が出ているオッサンをイメージしますが、これまた全く意味合いが違います。メタボの総称、メタボリックシンドロームは、生活習慣を介して罹患する病気の集合体を指します。例えば、肥満も脂肪肝もその仲間です。もちろん糖尿病もそうなのですが。先述した2型糖尿病は、メタボに分類される肥満や脂肪肝を経由してなる病気で、いきなり糖尿病になることはほとんどありません。そういった意味でも厄介なのですね。専門的な言葉でいうと、2型糖尿病の前駆病態には基礎疾患として肥満症や脂肪肝などが挙げられ、血糖値をコントロールするためには基礎疾患の治療も同様に取り組まなければいけない、といったところでしょうか。

 

まとめますと、厄介な2型糖尿病というものは、血糖値をコントロールするだけではなく、根本的に発症している基礎疾患も治療しなければなりません。その治療を怠ると、または読みが外れると痛い目にあうのです。動物では、犬よりも猫で遭遇する場合がほとんどで、猫の糖尿病治療の場合は、人と同様にストレスフルなスケジュールで取り組まなければいけません(最近は、犬でも生活習慣の変化で2型に近い糖尿病もあることが明らかになってきています)。少し前に示したように、治療に不可欠なインスリンが作用する臓器は、骨格筋、肝臓、そして脂肪組織です。ですので、メタボに陥っている猫などは、分かりやすく言えば、肥満で筋肉ダラダラで肝臓にも脂肪が乗っかっているわけなので、インスリンが作用する暇さえ見つけてくれない場合が多いので、肥満や脂肪肝を放ったらかしにすると血糖値はバンバン上がっていってしまいます(余談ですが、犬の場合も近年その病態が指摘されており、猫のように全てがパァになるわけではないのですが、インスリンが反応出来る臓器が中途半端なため、頑張って膵臓からインスリンが多めに分泌されている状態=インスリン抵抗性が、低血糖という病態を介して確認されてきています)。

 

治療に関してはここまでです。あとは勉強してください笑。とにかく糖尿病治療はストレスフルな作業です。それは治療する側もされる側もです。また時間も掛かりますし、お金も掛かります。なので、患者さんとのコミュニケーションは絶対的に大事なのですね。多くの糖尿病の犬や猫を診てきた僕は、いつの間にか、治療している犬や猫の飼い主の家族の一員みたいな状態になっていることもあります笑。ですがこれは本当です。治療方針を話す際は、正しく家族会議。これも繰り返しになりますが、上手に血糖値をコントロールするためには、糖尿病だけに着目していたら痛い目にあいます。ですので、その子が罹っている他の病気、例えば肥満症や脂肪肝という生活習慣病の改善にもメスを入れなければなりません。つまりご家族への教育と啓発ですね。その為には、普通の診察ではなかなか言えないようなことを、なかなか出来ないようなテンションで言わざる得ないことも多々あります。客観的にみたら、大丈夫か?と言う同業者もいます。ですが、相手の家庭に土足で入っていくようなきめの細かいやり取りも、糖尿病治療には必要なのですよ。それが出来ないのなら、この病気には手を出すなと、僕は専門家の立場から言いますね。

 

糖尿病の基礎応用臨床研究を数年し続けて思うのは、基礎は個人プレーで、応用はキャッチボールで、臨床は家族会議みたいなもんだということ。

 

松波動物病院メディカルセンター
松波登記臣 DVM., Ph.D

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